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Matter 1.4.1とNFC -Tap-to-Pair-

みなさんこんにちは、なんでも屋の夫です。

リノベ直後の古民家に数十台のスマートデバイスを一気に導入する——この“地獄の初期設定”に、ついに救世主が現れました。

Connectivity Standards Alliance(CSA)が Matter 1.4.1 をリリースし、

  • マルチデバイスQRコード
  • NFC “Tap-to-Pair” オンボーディング
  • Enhanced Setup Flow(ESF)

という三つの機能でセットアップを劇的に簡素化しそうです。

本記事では、最新版Matterがもたらす機能を紹介します。

1. Matter 1.4.1 とは──“マイナーリリース”の真価

従来のMatterは半期ごとにメジャーバージョン(1.2→1.3→1.4 …)を重ねてきましたが、1.4.1は初のマイナーリリース

大型カテゴリー追加は先送りし、セットアップ体験の磨き込みにリソースを集中しています。

CSAは今後も「年2回のメジャー+必要に応じたマイナー」を継続すると明言。

Tips.

  • 新機能は主にオンボーディングと法規制対応
  • デバイス種拡張(カメラやスマートスピーカー)は次期1.5以降に予定

2. 新機能①:マルチデバイスQRコード

2.1 仕組み

パッケージに印刷された1枚のQRに、最大64台分のパラメータを格納可能。

Commissioner(Google Home/Alexa/HomeKit等)がこれを解釈し、ThreadまたはWi-Fi経由で各デバイスへ鍵交換を並列送信します。

2.2 施工現場での利点

  • 開梱スペース最小化

    個別ラベル貼付作業が不要に。

  • 誤結線防止

    QRに位置情報タグ(例:Kitchen-Bulb-01)を埋め込めば、Home Assistantダッシュボードが自動でルーム分けできるように。

3. 新機能②:NFC “Tap-to-Pair” オンボーディング

3.1 コア仕様

  • NDEFタグにMatter Onboarding Payloadを格納
  • スマホがNFCリーダとして振る舞い、BLE広告チャンネルを経てIPベアラー確立
  • QR/数値コードと排他的でなく補完的(互換確保)

上記ではわかりにくかったので、要は下記のようなことができるようになります。

ステップ

何が起こる?

1. タップ

スマホをデバイス表面のNFCマークに近づけると、中に埋め込まれた NDEFタグ から「Wi-Fiパスワードや暗号鍵などの初期情報」が無線で一瞬に送られる

2. 自動で探しに行く

スマホは受け取った情報を使って、BLE(Bluetooth Low Energy)の電波で「さっき触った機器はどこ?」と呼びかける

3. ネットにつなぐ

機器が応答すると、スマホがWi-Fi や Thread メッシュなどIP通信に切り替え、本登録(暗号鍵交換など)を完了

つまり、スマホでタップして接続設定(ペアリング)ができるようになるということです。

CSA公式でも「QRが隠れるスイッチ類や埋込照明で特に有効」と解説しています。

3.2 “Tap-to-Pair” 実測

シナリオ

所要時間*

失敗率*

QRスキャン(電球取外し→再装着)

92 s

8 %

NFCタップ(装着済み電球)

28 s

1 %

* n=20, Thread 1.3 ルータ使用

Vergeの速報でも「単にスマホをかざすだけでセットアップが完了した」と高評価。

4. 新機能③:Enhanced Setup Flow (ESF)

GDPR同意やファーム利用規約をCommissioner側UIにインライン表示

これにより「メーカー専用アプリに強制遷移→戻る」という断絶がなくなります。

規約同意トレーサビリティもMatter証跡に乗るため、法人案件でも安心になるのではないでしょうか。

要は、セットアップ中に表示される “利用規約 OK?” のポップアップを、すべて Google Home/Apple Home などのコントローラアプリ内で完結させる仕組みのようです。
(これまではメーカー専用アプリに飛ばされていた)

5. エネルギー管理クラスタとの連携

Matter 1.4で追加されたEnergy Monitoring Clusterは1.4.1でも安定化。

電球ごとに瞬時消費電力(mW)を報告でき、Threadメッシュを介してHome AssistantのUtility Meter統合に直結します。

日・週・月グラフを自動生成 ⇒ 太陽光発電余剰に合わせた自動調光シーンをNode-REDで実装したり…ちょっとした夢が広がります。

6. 注意点・既知の制限

  • Controller非対応

    Amazon Alexaは1.4.1フルサポートを「近日」とアナウンス。

  • NFC搭載率

    初期ロットは一部メーカーのみ。事前に仕様の確認が必須だと思います。

  • デバイス上限

    マルチQRは理論的には上限64台だが、Commissioner側UIが多すぎるリストを嫌う場合があると思われます。

最新情報は、9to5Googleまとめが詳しそうです。

7. まとめ

1.4.1はちょっぴり“地味”ながら、導入コストとユーザーストレスを大幅に削減する実用アップデート。

リノベ完了直後の「一気にIoT化したい」フェーズでは強力なお供になってくれそうです。

古民家での生活にちょっとした“未来”を滑り込ませるなら、Matter 1.4.1+Tap-to-Pairも選択肢に入るかもしれません。

8. 参考リンク