こんにちは、なんでも屋の夫です。
今回は、ちょっとした過去の回想です。GPT-3.5 と GPT-4 が出てきたときに、自分の中で何が変わったのかを記録しておきたく。
当時の私は、単に「LLMのAIやべぇ」と感じたのではありませんでした。
むしろ、画面の中で人間がやってきた仕事の重さそのものが変わり始める、と感じていました。
- GPT-3.5 は、画面の中の知的作業が自動化可能だと片鱗を一気に見せました。
- GPT-4 は、それが一時的な流行ではなく、現実の構造変化だと示しました。
- GPT-5.4までの加速感により、土地や設備や地域のような、実世界に接続された価値はむしろ重くなると感じています。
振り返ると、あの頃の転職の迷いは、ものの価値を大きく変える技術がいつ世の中に出現するのかという不安に駆られていたのだと思います。
#1. もともとあった違和感
GPT-3.5 が出る前から、私は仕事の手応えにうまく言葉にできない違和感を持っていました。
知識は増えます。資料も増えます。けれど、それらはどこか手に触れません。積み上がっているはずなのに、社会に働きかけている感触が薄い。そんな感覚が、ずっと残っていました。
今の仕事が嫌だったわけではありませんが、このまま執務室で仕事を積み上げていって、その先に何が残るのか。
その問いに対して、自分の中でうまく答えを出せずにいました。
#2. その頃の私は、もっとデジタル側へ行こうとしていました
一度、転職を考えたことがあります。
ただ、そのとき私が見ていた先は、最初から実世界寄りの仕事ではありませんでした。むしろ当時の私は、量子コンピュータの開発といった最先端技術を持つ会社から内定をもらい、もっとデジタル側へ寄った仕事に進むことを考えていました。
画面の中の情報を、もっと高い密度で扱う側へ行けばいいのではないか。
もっと速く、もっと深く、もっと抽象度の高い仕事に寄せれば、自分の中の違和感にも答えが出るのではないか。そんなふうに考えていました。
そこには、かなり熱い情熱もありました。中途半端な気持ちではなかったと思います。
もっと先でもっと密度の高い場所で勝負したい。そういう気持ちは本物でした。
だからこそ迷いました。本気で次を取りに行こうと職場に転職の宣言もしていました。けれど、最終的に私はその道を選ばず、今の仕事にとどまりました。
#3. 違和感を大きくしたのは上司の働き方でした
その判断に大きく影響したのは、当時の上司の存在でした。
その人は、執務室の中だけで完結しない軸で働いていました。
土地、建物、設備、インフラ、生活、そして地域と人。そうした、触れられるもの、壊れるもの、維持しなければならないものの近くで仕事をしていました。
転職の意思を告げた後も何も接し方は変わらなかったことに、私はなんとなく心を動かされました。
こちらのほうが正解ではないか。本当に価値が残るのは、こちらではないか。そう思いました。
当時はまだ、その感覚をうまく説明できませんでしたが、直感としてはかなりはっきりしていました。
未来の価値は、いずれこうした現実に近い側へ戻ってくるのではないかと。
今振り返ると、あのときの私は、仕事を選ぼうとしていたというより、ものの源泉が移る先を探していたのだと思います。
#4. GPT-3.5が私に見せたもの
そういった迷いを抱えているとき、GPT-3.5、GPT-4が登場しました。
GPT-3.5 を見たときの感覚は、今でもかなり鮮明に残っています。便利だ、面白い、で終わる話ではありませんでした。
文章を書く。要約する。整理する。調べる。叩き台をつくる。企画に形を与える。
そういった、これまで人間の知的作業として扱われていたものの相当部分が、ついに自動化の波に乗ってこちら側へ押し寄せてきたと、私はそう感じました。
もちろん粗さはありましたし、誤りもとてつもなく多かったです。
ですが、本質はそこではなく、重要だったのは、原理的に可能だと示されたことでした。
この時点で、かなり多くのことが容易に想像できました。
画面の中だけで完結する仕事は、これから加速度的に薄くなる。消えるとは言いませんが、確実に圧縮し収束していく。
一人で回せる量は増える一方で、一つひとつの作業の希少性は落ちていく。
不思議なくらい自分の中で納得しました。
#5. GPT-4が、それを現実へ変えました
GPT-3.5 が足掛かりだったとすれば、GPT-4 はその向こうに本当に地面があると見せたものでした。
3.5 の段階では、まだ「便利なおもちゃ」と言ってこの先に続くのかという疑念がありました。
けれどGPT-4になると、その逃げ道はかなり狭くなりました。
そして、文脈保持が強くなり、推論の質が上がり、複雑な要求にもかなりの水準で返すようになりました。ここで多くの人が認めざるを得なくなったはずです。これは単なる補助ツールではなく、仕事の構造そのものを変える道具なのだと。
そして私の中では、この時点で一つの感覚が決定的になりました。AI が強くなればなるほど、現実に触れている人間の価値は上がる、という感覚です。
#6. なぜ実世界の価値が上がるのか
AIは記号の世界で圧倒的に強いです。
言葉、コード、画像、ルール、構造化された情報。そうしたものは、これからさらに高速化し、均質化し、低コスト化していきます。
では、その結果として何が重くなるのか。
現場を知っていること。土地を知っていること。設備の癖を知っていること。壊れ方を知っていること。直し方を知っていること。地域の特色を知っていること。
そして、それらをAIでさらに拡張できることです。
古い家の柱の癖、ポンプの微妙な異音、雨が来る前の空気の変化、土地ごとの水の流れ方、人が長年の経験の中でしか掴めない「なんとなく嫌な感じ」。
そういうものは、最後まで画面の中だけでは閉じません。記号に変換できる範囲は広がりますが、世界そのものは記号になりきりません。
だから次の時代に強いのは、単なるデジタル強者では終わらないと思います。
本当に強いのは、抽象と現実を往復できる人間だと思います。
(そしてさらに、ある現実を多数の位相で捉えることのできる人間だと思います)
#7. あのとき見えていたのは価値の変遷
今振り返ると、あのときの迷いは単なる進路の迷いではありませんでした。
もっとデジタル側へ進もうとする情熱は、確かにありそれは本気でした。
しかしながら、最後のところで私を引き戻したのは、さらにその先の未来を想像したときに、より現実に近いところで働く人の重みでした。
未来は、単純にデジタルへ一直線に進むわけではありません。むしろ AI が十分に発展したとき、画面の中の仕事は人間固有のものではなくなります。
そのとき希少になるのは、画面の外にあるものです。
AIが画面の外に今年からフィジカルAIという名で飛び出してくるでしょう。しかしながら、それでも掴みきれないデータ化されていない領域は大量にあります。
土、水、建物、電気、空気、農地、物流、修繕、運用、維持、地域、暮らし。
それらは古い領域ではなく、むしろAI 時代にもっとも再評価される領域だと思っています。
#8. これから人は何を持つべきか
ただ文章が書けるだけでは弱いです。ただ知識があるだけでも足りません。ただ情報発信がうまいだけでも、差になりにくくなると想像できます。
必要なのは、そのすべてを持ちながら、なお現実に基盤を持つことです。
AIを使える。文章も書ける。情報も整理できる。発信もできる。そのうえで、土地も見られる。設備も見られる。家も直せる。地域とも接続できる。実世界の制約を理解している。この組み合わせが、次の時代の強さになると思います。
人間が画面の中でやっていること想像できることが記号処理として分解できるなら、もう機械はすぐそこへ到達する。
その先で重くなるものが何か想像すると、極めてアナログなものでした。
#9. これから先の未来
今の私は、当時の自分の違和感をかなり肯定的に見ています。
あれは焦りでも逃避でも自己欺瞞でもありませんでした。世界の価値の重心が動く気配を、少し早く感じていただけだったのだと思います。その瞬間をこの時代に経験できることはとても貴重なことだと思います。
そして今、ChatGPTやClaude、Geminiや多種多様なAIに囲まれながら、私たちはその続きの上にいます。
私の専門分野の知識など、GPT-5.4でははるかに上回られてしまい、独自OS開発も資格勉強も教えてもらう始末で、開発作業もほぼ自動化されています。
開発は自動化され、開発サマリー文章もAI自身が書き、ヘッドレスCMSサービスに投稿までする。Web更新ももうある程度任せつつあります。
一生懸命私がバイナリやアセンブリ、そのほか高級言語をいじっていた時代からは考えられないほど加速感を感じます。数値流体力学のようなある程度複雑なアルゴリズムなども一瞬で理解・実装し、第三者へのわかりやすい説明方法まで提案してきます。
人間がただアイデアを考えてやってみようと問い掛ければ、あとは勝手に高品質にやってくれるレベルにかなり近づいてきていることを感じます。
そうなったとき、あなたは次は何をしようと思いますか?
AIによって人間が空虚になる未来より、AI によって人間がもう一度世界へ触れ直す未来のほうが、ずっと面白いから、これからにとても期待しています。
未来は、ここ数年はしばらくモニター画面や手のひらサイズの文鎮の中にもあります。けれど、そこだけにはありません。
未来は、土の上にあります。水の流れる場所にあります。古い家のきしみにあります。設備の唸りにあります。地域の沈黙のなかにあります。実空間にあります。そして、その現実にAIという新しい知性を接続できる人間の側にあるように思います。
以上で、ポエムを終えたいと思います。